蟻虫とカラットゾンビ

懐かしの所有物で振り返る断捨離前の悪あがき

アダムの肋骨 傑作短編集

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印象深い幻想的な表紙



初 版 1982.10.15
著 者 諸星大二郎
巻 数 全1巻
発行所 株式会社 集英社
定 価 360円
評 価 ★★★★☆

 

あらすじ

辺境の星に難破した一隻の宇宙船。その海上の見慣れぬ浮遊物に、ひどく興味を示した巨大な一羽の鳥が近づいて来た。旺盛な彼女の好奇心は、いつしか執拗に一人の乗組員に向けられるのだが…。

 

書評

表題をはじめ、全8話で構成された正に傑作短編集です。あの巨匠、手塚治虫氏が真似する事が出来ない…と、ぼやいたらしい独特の画風、そして幻想的かつリアルなストーリー展開には隠れたファンも多く、読後に残る不思議な感覚は、一度読めば虜になるかもしれません。

そんな中、個人的に印象深かったのは7話目に収められている「袋の中」でしょうか。

その浮浪者は、いつも大事そうに大きな古い革袋を身につけていた。とあるサラリーマンが浮浪者にたばこを一本やった事で、浮浪者は過去の事について語り始める。裕福な家庭に生まれた彼は、学校の帰りに空き地のごみすて場で奇妙な生物を発見する。古い革袋にその奇妙な生物を飼い始める少年。餌として、はじめは食事の残りや野菜のクズを与えていたが、いつしかそいつは「肉の味」を覚えてしまっていた。少年はやがて青年となり、次第に袋の中のそいつに支配されていく…。