蟻虫とカラットゾンビ

懐かしの所有物で振り返る断捨離前の悪あがき

アドビ イラストレーター 5.5J

アドビ イラストレーター 5.5J パンフレット出典:アドビシステムズ株式会社

今なお、世界標準のドローイングソフトとして君臨し続けているのが、アドビシステムズ株式会社の「イラストレータ」通称「イラレ」です。このパンフレットはVer.5.5となります。2022年現在のVer.が27.0となっていますので(えっ!そんなに!)こりゃ、かなり古いですね。

表紙を飾るのはイラレの代名詞とも言える、ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」です。イラレの起動画面といえば、個人的にこのイメージが強く印象に残っており、デザインを変えながらしばらくの間、使用されました。

それにしてもこの頃は、今と違ってパッケージ版が売られていましたね。発売は1994年。私が業界に足を踏み入れた頃になります。当時アナログ寄りの学校だったためか、ほとんどMacを扱うこと無く入社。それはそれは大変な思いをしました。しかしながらソフトの操作方法を覚えるには、この切羽詰まった状態が経験上一番身に付くのではないかと思います。

 

アドビイラストレータ5.5J パンフレット

出典:アドビシステムズ株式会社

様々なイラストレータの機能が紹介されています。簡易的な各ウィンドウのデザインが、時代を感じさせてくれます。

上から順に「フォントの検索」「タブ設定」「ペイントスタイルパレット」「レイヤーパレット」等の説明がされています。これらの機能は現行のイラストレータでも、もちろん使用可能ですし、左上に見えるツールパレットも増えはしたものの、減ったものはなさそうですね。これらの事を踏まえると、既にこの時点でイラストレータの完成度は非常に高かった事がわかります。

それにしても今更ながら「ペイントスタイル」の設定は凄すぎますね。正に天才的発想です。良くぞ、色を塗るべき箇所を「塗り」と「線」に分けたものです。一見何でも無さそうですが、恐らくこれが出来る事で制作における利便性は多いに向上したのではないかと思われます。

 

アドビ イラストレーター 5.5J パンフレット

出典:アドビシステムズ株式会社

スッキリとしたレイアウト上に開発元である「Adobe Systems社」や「イラストレータ」の紹介がされています。

Adobe Systems社」の年商が当時で597億、2022年現在は「CC商法」が功を奏してか、10倍の5917億の売上を計上しているみたいです。会社としては笑いが止まらないでしょうが、ユーザーにとっては永遠に使用料を払わなければいけない訳で、何とも困った仕様です。

さて「イラストレータ」の機能には、様々なモノが用意されているのですが、最も難しく且つ取っつきにくいツールと言えばやはり「ペンツール」ではないでしょうか。レイアウト上部に掲載されている猿のイラストも、恐らく「ペンツール」で描かれているとは思うのですが、多くの人々が「ペンツール」の独自の仕様に、先ずはお手上げ状態になる事間違い無しです。

随分前に知り合いと「イラレ」の話になった際に、唐突に「ペンツールって、使う必要ないよね。」みたいな事を言われた時は驚きました。この発言は実に「ペンツール」の操作性の難解さを物語っています。まあ「イラストレータ」の使用用途にも依るのでしょうが「使えないよりは使えた方が良いのでは。」みたいな事を言ってお茶を濁した記憶があります。

先述の猿のイラストも一見難しそうですが、順を追って行けば時間は掛かるかもしれませんが、きっと描けると思います。正に「ペンツールを制するものはイラレを制するんです」と、言うのはちょっと言い過ぎですかね。

 

イラレパンフの誤字脱字

出典:アドビシステムズ株式会社

ところで今回、このパンフレットをご紹介するにあたって、よくよく本文を見直してみると……ん?!!誤字脱字のオンパレードではありませんか。更には、字間が怪しいところや右端が揃っていない、変な空白などなど。折角なので集めてみましたよ♪

既に印刷物として世に出回った訳ですから、規模は違えど同業他社の私としては震えが止まりません。校正はどうしたの?検版は?果たして大丈夫だったのでしょうか。否、大丈夫じゃ無いと思います…。

それにしても酷いのは片仮名の「ン」ですね。ことごとく最初の「てん」の部分が欠落しています。これは誤字というよりは、システム的な問題だったのかもしれませんね。

 

アドビイラストレータ5.5J パンフレット

出典:アドビシステムズ株式会社

Adobe illustrator 5.5Jは、精密なイラスト作成機能と高度なページデザイン機能をひとつのパッケージで実現」とありますが、正にその通り。しかもベクターデータですから、拡大縮小も何のその。この辺りは拡大すれば莫大な容量を喰ってしまう「フォトショップ」とは大きな違いです。

またこのソフトは、本来はペラ物のデザインや、ロゴマークロゴタイプ、イラストレーションの制作に一番適しているとは思うのですが、ソフトの快適性故か、現在でも割と多めのページ物の制作に利用している方もいらっしゃるようです。確かに慣れれば、使い勝手は抜群に良いですからね。

紙面では、様々な機能が紹介されていますが、今となっては当たり前と思える機能も、この時代はかなり先進的だったのではないでしょうか。

それにしても、前回も少し触れましたが「強力な文字処理機能」を謳っている割には、相も変わらず「ン」が大変な事になっていますね…。

 

アドビイラストレータ5.5J パンフレット

出典:アドビシステムズ株式会社

付属のプラグインフィルタで、個人的に使うのはパスファインダフィルタの「合体」や「型抜き」「分割」あたりでしょうか。多用はしないものの、ここぞと言う時はやはり便利です。また「トラップ」なんてのも本当は使用する事で「版ズレ」が防げるのでしょうが、チラシ等の制作で使う事はありません。

それにしてもプラグインフィルタで忘れてはいけないのが「KPTフィルタ」です。知る人ぞ知る「Kai’s Power Tools」です。ボタン一つで立体的な文字等が作成できたので簡単便利。その出来上がりの善し悪しは置いといて、当時業界内で流行りましたっけ。KPTを使用したチラシで溢れかえっていた時期もあった位です。

 

アドビイラストレータ5.5J パンフレット

出典:アドビシステムズ株式会社

「デラックスCD-ROM」の中には、懐かしの「Adobe Dimensions 2.0J」も入っているようです。当時の使用感としてはそこそこ便利でしたが、余り無茶な事は出来なかった様な記憶があります。「Adobe Dimensions」は、その後しばしの沈黙を破って2017年にCC版が発売されています。

その他には「Photoshop」や「Premiere」、そして今はなき「PageMaker」のデモ版等がCD-ROMに同梱されていたみたいです。

さて、イラストレータ5.5Jの気になる希望小売り価格は…120,000円也。果たしてこの金額は高かったのか安かったのか。一度購入してしまえば、パッケージ版として永久に手元に置いておける訳ですが、それでは企業側が儲かりません。当然の如くより良い製品と称して(勿論それは間違ってはいないのですが)バージョンアップを求めて来ます。それ故に、ユーザー側は例え高価なパッケージ版を購入したとしても、安泰という訳ではないのです。それは今現在、デザインの現場イラストレータ5.5Jを使っている人が世の中にどれ位いるのか、考えてみれば分かりやすいかもしれません。DTPデザインを行う上で、結局のところアドビ社の名目上いつでも最新版が使えるという「CC商法」に乗っかるしか方法が無いのかもしれません。まあ私はフリーランスではないので、そこまで弊害は被って無いのですが。

それにしてもこの先、バージョンは何処まで進んで行くのでしょうか。まだまだ「Adobe illustrator」の時代は続くのかもしれませんね。