蟻虫とカラットゾンビ

懐かしの所有物で振り返る断捨離前の悪あがき

アシュラ

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生まれてこないほうがよかったのに

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実際の連載は1970年の「少年マガジン」にて

 

 

 

初 版 1993.5.1
著 者 ジョージ秋山
巻 数 上下巻
発行所 株式会社ぱる出版
定 価 1,800円
評 価 ★★★☆☆

 

あらすじ

時は室町時代末期。空前の大飢饉が、とある村を襲う。そんな中、望まれる事無く生まれて来てしまった主人公のアシュラ。飢えという極限状態の中、あろうことか気がふれてしまった母親に喰われそうになってしまう。からくも助けられ本能のままに生きるアシュラ。彼の心の中には生への猜疑心と、母親への憎悪の念が燃えていた…。

 

書評

1970年、週刊少年マガジン誌上、連載第一回目にしてその凄惨な描写と衝撃の内容故に回収騒ぎが起こった曰く付きの作品です。しかしながら全巻を通して読んでみると、人間の存在、人間の根源的問題に鋭くメスを入れた、現代社会に対する警告の書とも言えるかもしれません。作中の彦次郎の台詞は強烈でした。
「はらがへってちゃ愛だの恋だのいってられやしねえ」
「人間の精神なんてのはもろいもんさ はらがへれば精神なんてありゃしねえ」
「はらがへれば食うことがさきだ!」
「物質的にそろったうえでないと精神なんてそだつわけがねえんだ!!」

作者のジョージ秋山氏は2020年5月12日に77歳で亡くなられました。1966年に「ガイコツくん」でデビューし「デロリンマン」や「銭ゲバ」「ザ・ムーン」「浮浪雲」などなど、ジョージ秋山氏しか描けない独特の世界観で、数多くの作品を残されました。氏のご冥福をお祈りします。