蟻虫とカラットゾンビ

懐かしの所有物で振り返る断捨離前の悪あがき

Panasonic D-snap

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パナソニックより発売されたSDマルチカメラ「D-snap」のカタログのご紹介です。黒を基調とした中々印象深い表紙が特徴的です。裏表紙を見てみると、このカタログは2002年12月1日現在のものなので、本製品の発売日もその辺りだったと思われます。イメージキャラクターは、今なお現役で活躍中の浜崎あゆみ氏。当時24歳位でしょうか。

それしにても、このデジカメの形状はその実際の操作性はさて置き、中々風変わりな感じです。今でこそデジカメは、スマホに押され絶滅危惧種に陥りつつあり、大手メーカーもデジカメ事業から撤退する始末。しかしながらこの頃は正に百花繚乱、玉石混交。まだまだメーカーが他社との差別化を図るため、各社独自の付加価値を付けてそれこそ色々なデジカメが店頭を賑わせていました。まだまだ「デジカメの基準」たるものが確立していなかったのではないかと思います。

因みに「D-snap」のロゴの左側にあるオレンジの「WiLL」のマーク。これは1999年から2004年にかけて行われた日本の異業種合同プロジェクト名だそうな。なるほど。そう言えば、確かにこういうのありましたね。個人的にはそのフロントライトのデザインが個性的な「WiLL サイファ」が思い出されます。

 

middle-edge.jp

 

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本体をテーブルに置いて、画面を開いた所です。右横に置かれているSDカードと比べてみても、その小ささが伝わるのではないでしょうか。コンパクトの様な形状で、かなり多くの機能が盛り込まれているみたいです。ムービーも、静止画も、音楽も。中々の欲張り仕様です。それにしてもやはり、本体横のSDカードが時代です。512MBですから、0.5ギガでしょうか。最早、たった?512MBですが、当時は、目玉が飛び出す位高価だったと思います。

少し気になったので、当時のSDカードの価格を調べてみると…

何と、1ギガで驚愕の10万円超えでした。と、なると512MBでもやはりトンデモナイですね。技術の進歩、人類の進歩と調和は凄まじい。

 

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「撮る」「録る」「見る」「聴く」「残す」

マルチカメラの名称に恥じない多機能振りです。色も中々バリエーション豊かですね。少々気になるのは、バッテリーパックの容量の少なさでしょうか。1000mAhは、今でこそ少ない様な気もしますが、当時はこれ位が標準だったのかもしれません。本体サイズも大きく影響しているでしょうし。

 

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「カードスタイルで、約10時間。」この録画時間は今でも相当驚異的ですが、タイトル右横にあるこれまた当時驚異的な販売価格だった512メガバイトのSDカードが為せる技だったのでしょう。まあ、それでもリアルタイムで10時間は有り得ませんから、トータル的に10時間だったのでしょう。そもそも、バッテリーが持ちそうにありませんしねえ。でも、この書き方だと誤解を招きそうな気がします。

 

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「タテ撮り」「ヨコ撮り」なるものが出来るみたいですが、この大きさだと手ブレが気になる所です。今では当たり前の手ブレ補正もありませんし。ズームもデジタルで2倍と、中々時代を感じさせるスペックです。更にスペックを見てみると、なるほど。段々と「10時間録画」のカラクリが見えて来ました。最高画質の「スーパーファイン」でも秒間15フレーム。画像サイズは驚愕の320×240万画素。これならば10時間録画も512MBだと可能かもしれませんね。但しその際は、画質が最も低い「エコノミー」になる訳ですが。ふむ。確かに「10時間録画」に嘘偽りはありませんね。しかし…。

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恐らく、色々と良い方面に解釈されるように?かなり指が長い女性が起用されている?のは、気のせいでしょうか。しかしながらそれを踏まえても、どう見ても撮影しにくそうに見えるのは私だけでしょうか。本機で撮影した画像をSDカード経由で「ケイタイ」に送れるそうな。掲載されているガラケーが時代です。

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本機の多機能振りは、こんなところにまで。何とモバイルプリンターも用意されていました。SDカードをプリンター本体に差し込むだけで出力出来るのは、中々便利だと思います。しかしながら、恐らく「チェキ」みたいな方式で印刷されるでしょうから、当時はそのクオリティーにも少々疑問が残りますし、何よりコスト面の問題が半端では無かったと思われます。しかしながら「取り敢えずは出来るんじゃい」という多機能振りをアピールするには、申し分無かったのではないでしょうか。それにしても、右下に掲載されている「ベストショットを、8分割プリントに。」の文字。当時、絶好調だった「プリクラ」を意識してのモノだと思われますが、やはり時代を感じざるをえません。

 

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果たして、テレビ番組をデジカメで観る必要があったのか少々疑問ですが、まあこれも多機能振りの一環でしょう。それにしても気になるのが、その録画時間。8MB(8GBではありませんよ)のSDカードが付属しているのは良心的だとは思うのですが、最高画質のスーパーファインだと、その録画時間、驚愕の1分ですよ、1分。流石にこれは厳しい。

 

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多機能振りは、まだまだ続きます。今度は音声再生、録音機能です。その音質はさて置き、このコンパクトさは割と使い勝手が良かったかもしれません。因みにオープン価格のSDオーディオレコーダー SV-SR100ですが、何と世界初、パソコンなしでCDからSDメモリーカードへ圧縮方式で録音を可能としたマシンだったみたいです。

 

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マルチ振りは更に続き、次は保存方法です。ここではDVDやハードディスクに保存する方法が紹介されています。ハードディスクも、DVDも今の時代で使われていますが、その容量は当時とは比べ物にならない位巨大化し、ましてや「クラウドサービス」何てものが生まれるなんて、この時代は想像する由もありませんでした。

 

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SDマルチカメラ、SDモバイルプリンターの仕様です。今と比べれば、スペックは低めでお高い感じでしょうか。まあ当然と言えば当然なのですが。それにしてもプリンターによる出力は別にして、ほぼ全ての事が現代のスマートフォンで出来るのが驚きです。こんな時代が来るなんて、やはり当時は想像もつきませんでしたね。

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32MBから512MBまで用意されている、幅広いSDカードのラインナップ。まあ先述した様に、512MBのSDカードなんてホントーにトンデモナイ価格なので、オープン価格もさもありなんなのかもしれません。恐らくこの頃位から「オープン価格」なんて表現が横行し始めて来たのではないかと思うのですが、個人的には全く有り得ない価格表記ですねえ。よくわからんし。

さて、長々と当時の最新鋭マルチカメラの御紹介をしてまいりましたが、漸く最終ページを迎える事となりました。他社との差別化故か、今では考えられない位の最早迷走気味の多機能具合。天晴でした。今や無くなりつつある「デジカメ」の草創期は、こんな具合だったんですよ…。なんて事実を、心の片隅にでも留めておいて頂ければと思います。